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東京建築賞選考委員会 委員長 鈴木博之
 37回目を迎えた東京建築賞には、例年通り極めて質の高い応募作品が寄せられた。今回の応募作品は戸建住宅部門5点、共同住宅部門15点、一般部門一類7点、一般部門二類15点、計42点である。多くの作品を寄せていただいたことに感謝したい。ここから部門ごとに、現地審査の対象を選んだ。現地審査対象となった作品総数は24作品である。複数の委員がグループとして審査を行い、5月16日に最終選考を行い、12作品が受賞した。
 戸建住宅部門は比較的応募が少なく残念だった。住宅の設計には個別条件が大きく影響するが、最優秀賞となった「流星庵」は地元産の間伐材を用いた空間構造の表現が刺激的であった。共同住宅部門はそれぞれの開発条件の違いが大きく、一概に同一線上で比較することはむずかしいが、最優秀賞、優秀賞、奨励賞を受賞した各作品は、それぞれ焦点を絞った設計意図を掲げていることが感じられるものであった。一般部門一類の作品は、それぞれ工場、スポーツ施設、児童福祉施設と多様な作品が上位入賞となった。福祉施設として最優秀賞とともに都知事賞を受賞した「至誠大地の家」は、開かれた建築、さまざまな要素を受容する建築を目指したものであり、その社会性の高さが評価された。一般部門二類は大規模建築であり、他の建築賞応募作品との競合が懸念されるが、結果的には特色ある作品が受賞した。応募設計組織のバランスを考えた結果であるが、これは致し方の無いところである。できるだけ多くの事務所からの応募を期待したい。それが東京建築賞のステータスをさらに高めることにつながるであろう。