避難所
モデル
プラン
みんなでつくる
安全で安心な避難所

多様な人物のイラスト

避難所モデルプラン
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〔注〕 ・本資料の著作権は、(一社)東京都建築士事務所協会に帰属します。

パンフレット

感染症という、
新しい災害に配慮した
避難所づくりを
お手伝いします。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、私たちの生活は大きく変化しています。
普段の生活だけでなく、地震や風水害などの災害で避難生活を送る場合にも、あたりまえのこととして感染症に配慮しなければならない時代になりました。このモデルプランは、感染症についての一般的な知識にもとづき、建築士の視点から、避難所を実際に運営し、利用する方々のためにその姿をわかりやすく示したものです。
 地域の特徴や季節、気候などによって災害とその被害の状況はさまざまです。感染症に対する知識やノウハウも日々新たに見出される中にあっては、避難所のあり方も一律ではなく、ここで示したことが常に実現できるとも限りません。すでに多くの自治体が、感染症に配慮した避難所運営のガイドラインなどを策定しています。それらに従った上でこのモデルプランを参考にしていただき、地域や施設の特性を考えた、柔軟で効果的な避難所の開設と運営が行われることを心から願っています。国家資格を持ち、建築の設計や工事監理を行う専門家のこと。一級、二級、木造などの区別があり、それぞれ設計できる建物規模や種別が異なる。

受付に並ぶ人物のイラスト
  • 避難所を
    知っておこう

    避難所とは、自宅で住み続けることが困難な場合や二次災害を受ける可能性がある場合に、一時的に生活をする施設のこと。避難所の運営を考える際に知っておくべき項目を示します。

  • 避難所の
    収容人数

    災害が起きた時、どの程度の人が避難してくるか正確な予測は困難です。避難所の想定収容人数の限度を超えたという理由で、避難者が入所を断られた事例もあります。地域の避難人口と避難所の収容人数をある程度想定しておきましょう。

  • 地盤高と
    ハザードマップ※1

    あらかじめハザードマップで災害が発生した場合の避難所の安全性を確認し、その規模に応じて的確な避難ができるようにしておきましょう。災害の拡大にともない、より安全な場所に避難する可能性を考えておくことも大切です。

  • 耐震性

    強い地震の後でも安全性を維持できる建物かどうか、Is値※2を確認するなどの耐震診断を行っておきましょう。強い揺れにさらされた建物は耐震性能が落ちている可能性があるので、強い余震が続く場合などは要注意です。

  • 延焼の可能性

    大規模火災が生じた場合でも避難対象の地域から容易に避難できるか、避難後に周囲の延焼から逃れることができるか、周囲の道路には十分な幅員があり消防車や救急車が支障なく活動できるかなどを確認しておきましょう。

  • 換気性能

    感染症対策のみならず健康で快適な居住環境を維持するために、定期的に換気を行う必要があります。機械換気設備や自然換気に使える窓の有無を確認するとともに、換気する頻度を知るために簡易CO₂測定器を活用しましょう。

  • 避難ルートの
    明快さ

    避難所への道筋がわかりにくい場合は事前に広報しておきましょう。「逃げ地図」※3などを使った講習会は防災意識を高めます。最初の避難時はもちろん、さらに別の施設への二次避難が必要になった際の道筋も確認しておきましょう。

  • 他地区避難施設との
    連携(広域災害の場合)

    収容人数や位置関係、備蓄内容など、避難所の能力を把握、共有し、無駄のない運営ができるようにしておきましょう。また、災害対策本部や避難所同士で連絡が取りあえる体制と手段を準備しておくことも大事です。

  • 建物種別ごとの
    留意点

    避難所の開場判断者や開錠者、運営責任者を確認しておきましょう。民間施設を借用する場合は、各施設の所有者や管理者と避難所使用時の具体的な内容を打合せして、関係者で共有しておきましょう。

※1:災害発生時に危険だと思われる場所や避難場所を示した地図。地震や水害など災害の種類別に国や地方公共団体が作成し、Webで公開されている。

※2:強度や粘り強さ、形状のバランス、経年劣化を考慮して、建物の耐震性を診断する指標。大規模な地震に対しては0.6以上必要とされている。

※3:日常生活の中で住民自身が作って災害に備える避難ツール。ハザードマップだけでは得られない地域の特徴を反映できる。

避難所の開設と運営

  1. 1

    自治体や町内会などからの連絡系統は共有されているか。災害対策本部のマニュアルなどを確認すること。

  2. 2

    地震などの災害で安全であると判定された建物なのか。震度5強以上の強い地震の場合は建物の強度を再確認しておくこと。

  3. 3

    受入限度人数の想定はできているか。収容できる人数を想定し、家族の構成比率、要支援者の人数などを把握しておくこと。

  4. 4

    避難希望者が収容できなくなった場合の避難先の変更など、施設の混雑に応じた対応方針を確認できているか。

  5. 5

    災害の規模と拡大に応じた避難所の運営方針や、発災時に起こりうる被害状況に関する様々な情報を事前に確認できているか。

避難所モデルプラン

避難所として使うことが予定されている施設では、あらかじめ様々なケースを想定しておくといざという時の混乱が避けられます。避難所では不特定多数の人々が集まって生活するので、年齢、ジェンダー、家族構成、宗教、疾病など、その特性に合わせた配慮も必要です。ここでは、主に震災時を想定し、避難所として最も一般的と考えられる公立小学校の建物を例にモデルプランをご提案していますが、体育館だけを避難スペースに想定している地域や、水害時は1、2階が水没してしまう地域など、その事情はさまざまです。状況に応じて柔軟に避難所を運営しましょう。

避難所のイラスト

居住
スペース

できるだけまとまった広さが取れる体育館や教室、会議室などを選び、避難者の生活スペースを設けます。

基準となるスペース

居住単位空間は、以下の目安に沿って設定します。感染症対策としては1人あたり4㎡を確保したいところですが、面積が不足する場合は家族単位で区画を設けることで、1人あたりの面積を減らし収容人数を増やすことができます。

面積の
目安

一般(個人)
4㎡/人、簡易間仕切り
一般(2・3人家族)
2.5~3㎡/人、簡易間仕切り
一般(4人家族)
2.5㎡/人、簡易間仕切り
高齢者等
6㎡/人、簡易間仕切り・ベッド
妊婦
6㎡/人、簡易間仕切り・ベッド
感染者・要観察者
9㎡/人、簡易間仕切り・ベッド
面積の図
平面図
居住スペース各所の仕上げ
居住スペース
各所の仕上げ
ブルーシート・
断熱マット等
ほこり対策・底冷え対策。
簡易間仕切り・段ボール・
カーテン・簡易テント等
高さは1.5m程度、通風も考慮して配置を決定する。緊急時はテープで区画を表示する。プライバシーの確保と飛沫の飛散防止。出入口は向かい合わないようにずらして配置。
ベッド 簡易ベッド・
段ボールベッド等
ほこり対策と衛生上、20㎝以上の高さが望ましい。
ベッドに転用できる段ボール箱を備蓄品の収納に使用しておく。
通路、居住スペース、上下足テープや仕切りなどで区分を明確にする。
換気回数 自然換気の方法を考えておく。 一般住宅並みの1時間に1回で十分かどうか。場合によってはCO2濃度簡易測定器の活用も検討する。
換気回数自然換気の方法を考えておく。 一般住宅並みの1時間に1回で十分かどうか。場合によってはCO2濃度簡易測定器の活用も検討する。

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避難所のイラスト 避難所のイラスト
廊下

主要動線となるので、できれば1.8m以上の十分な幅を確保します。感染者を受け入れる場合は、玄関寄りに感染者スペースを設け非感染者と完全に分離します。

イラスト01
受け入れ・トリアージスペース

傷病者が多い場合は、識別救急を行うスペースを玄関先に設けて有資格者を配置し、医療機関と連携。スペースが確保できる場合は屋内に設けます。

災害や大事故などで同時に多数の患者が生じた際、手当ての緊急度に従って優先順をつけること。
イラスト02
サイン・掲示板・相談案内・情報センター

行政・医療・設計専門家と連携して設置しましょう。人目に付きやすいところに大きな文字で、幼児にも理解しやすい表示にします。

イラスト03
玄関・受付

避難者の一次受付、検温や問診、登録、感染者・非感染者・要介護・要配慮者の区別・分類、避難場所の指示、体調検査や消毒コーナー、ボランティアの受付などを行います。

イラスト04
感染者等エリア

できれば1階に配置して入口と出口を分け、健常者エリアとの行き来を制限します。ゴミ箱や物資置場などもエリア内で専用の場所を確保しましょう。

イラスト05
倉庫・配給所

水・食料・マスク・日用品・衛生用品の出し入れなど管理しやすい場所に設置。女性用品は専用の場所を設け、女性が管理や配布を行いましょう。

イラスト06
自衛隊の被災地支援活動の受け入れ

炊事・浄水・入浴車など、校庭に自衛隊の車両が進入できるよう、ある程度のスペースを空けておきましょう。

イラスト07
トイレ・洗面所

男女は分離し、できれば女性用は多めに設けておきましょう。地震によって配管が壊れていないか使用前に要点検。断水時はトイレ処理セットなどを用いて簡易トイレとして利用しましょう。

イラスト08
共有スペース

できれば人目に付きやすい場所に設け、乳幼児のプレイスペース、コミュニケーションスペース、礼拝スペースなど、用途はその都度変化させましょう。

イラスト09
体育館

空調や換気設備が備わっていないことが多いので、特に冬季や夏季は気温の変化に留意することが大切です。足元の窓と高窓を開放しながら効率的に換気し、世帯同士が向き合わないようスペースの入口を互い違いに配置しましょう。

イラスト10
屋外空間の活用

簡易トイレ、テントスペース、ペット受け入れスペース、救助の受け入れスペース、駐車スペースなど、屋外空間もうまく利用しましょう。

イラスト11
ゴミ置き場

居住スペースから離れたところに設置しましょう。ゴミは各自で持ち帰ってもらうなど、避難者にも協力してもらいましょう。

イラスト12

避難所の特性に応じて
配慮する事項

避難所には不特定多数の人々が集まります。 多種多様なカテゴリーに属する避難者もいますので、周囲の理解などさまざまな配慮が必要です。

  • 高齢者

    高齢者

    受付やトイレに近いところで、基本的には上り下りのない1階、移動に支障がない高齢者なら冬季は底冷えの少ない2階に居住スペースを配置。正確に情報が伝わるよう配慮しましょう。

  • 妊産婦

    妊産婦

    体が冷えないよう毛布や暖房器具の配慮が必要です。段差を少なくして周囲から独立した居住スペースを確保し、出産の際は専用の施設や母子避難所などへの入所を検討しましょう。

  • 障害者・要介護者

    障害者・要介護者

    介助者のサポートを受けながら、居住スペースを分散して設ける方が良い場合もあります。一般の避難所での生活が困難な場合は、福祉避難所といった専用の避難施設を検討しましょう。

  • 乳幼児

    乳幼児

    夜泣きの際外に出やすいよう出入り口のそばに居住スペースを配置。トイレの一部に台を設置したオムツ交換スペースや、プライバシーに配慮した授乳スペースも確保しましょう。

  • ジェンダー

    ジェンダー

    女性の単身者や女性だけの家族の場合、居住スペースを別に設けたり、女性用品の受け渡しや相談に女性担当者を配置するほか、ジェンダーについても気配りをしましょう。

  • 外国人

    外国人

    会話や文字の理解度を考え、情報弱者にならないように配慮。ムスリムにはハラールフードを手配し礼拝のスペースを確保するなど、お互いを尊重して生活できるよう配慮が必要です。

  • 感染症養成者および感染の疑いのある方

    感染症養成者および
    感染の疑いのある方

    コンパクトな場所に確実に隔離できる居住スペースを設置。専用のトイレスペース、ゴミ箱、物資置き場などを確保し、看護人の動線も含めて避難所内での行き来は避けるようにしましょう。

  • ペット

    ペット

    一般の避難者から隔てられた専用の居住スペースを準備しましょう。ケージに入れる、食事やトイレなどの世話は飼い主がするといったルールを決めて、お互いに情報を共有しましょう。

避難所チェックリスト

モデルプランに加え、避難所の設置や運営の際に役立つチェックリストと、国や自治体の防災や避難に関するガイドライン情報へのショートカットリストを掲載しました。併せてご利用ください。

項目ごとにタップして
チェックができます
下部のCLEARボタンで、選択を解除できます

PDF版が
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できます

下部のCLEARボタンで、選択を解除できます

1避難前の準備
  1. 避難施設の建つ敷地の地盤高を確認しているか。
    地域のハザードマップと照合しているか。
    大規模な洪水が生じた際、避難所自体の安全性も確認しておきましょう。
  2. 避難所の耐震性を確認しているか。
    強い余震等で倒壊する恐れは無いか、地震の後であっても十分な安全性を維持できる建物かどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
  3. 避難所への道筋は確認してあるか。
    避難ルートが分かりにくい場合は事前に十分な広報が必要です。
    「逃げ地図」*などを使って地域毎に講習会を開催するのも防災意識を高めます。
    万一他の避難施設への避難が必要になった場合のルートを確認しておきましょう。
  4. 避難所の収容能力などを確認しているか。
    各避難所の収容人数や備蓄内容などを把握し地域全体として、
    総合的な避難所運営ができるよう準備しておきましょう。
  5. 機械換気設備は備わっているか。
    大規模な火災が生じた場合でも、周りから火災の影響を受けることが無いか、
    周囲の道路に十分な幅員があり、消防車や救急車が支障なく活動できそうか確認しておきましょう。
  6. 周囲から火が燃え移る可能性はあるか。
    健康で快適な居住環境を維持するためには、定期的な換気が必要です。
    停電などで換気設備が動かない場合や、元々換気設備が備わっていない場合は、定期的に窓を開けて自然換気を行いましょう。
  7. 避難所の開場や運営の責任者は誰か。
    避難所の開場判断、実際の開場者、運営責任者を確認しておきましょう。
    民間施設を借用する場合は所有者や管理者と具体的な打合せをしておきましょう。
  8. 自治体や町内会などからの連絡系統は共有されているか。
  9. 地域の災害対策マニュアルを予め確認しているか。
2避難スペース
3避難者属性
4機械・電気設備
5備品

災害が起こる前に

  1. 1

    地域の防災計画を
    確認しましょう

    区市町村はそれぞれ「地域防災計画」を策定し、震災や風水災など災害の種類に応じた防災計画を立てています。お住まい(所属)の自治体の「地域防災計画」を確認しましょう。

  2. 2

    避難所の
    居住スペース

    感染症が蔓延している状況では、避難人口に対して避難所の面積不足が懸念されます。 たとえ避難先であっても、最低限の居住環境を確保して感染対策を施すためには、1人当たりの面積は広いに越したことはないのですが、一方で被災した人々を避難所の外で危険に晒すわけにはいきません。このモデルプランでは1人当たりの面積ではなく、普段の生活単位である「世帯」をもとに考えることで、居住環境の確保や感染症対策、収容人員と面積のバランスを考慮しました。

    世帯人数や世帯構成を考える

    各自治体では国勢調査をもとに世帯人数や世帯構成とその構成比を発表しており、そこから地域ごとに世帯構成の割合を想定することができます。東京都総務局では「家族類型別世帯割合」の中で、世帯構成とそれぞれの割合を示していますが、それをもとに世帯人数を想定すると、1人世帯:約50%、2人世帯(夫婦のみ・ひとり親と子供):約20%、3人以上世帯(夫婦と子供・ひとり親と子供):約30%となります。地域によって1人世帯が60%を超えたりするなど、世帯構成には差がありますので、地域の特性を踏まえて想定してみましょう。

    各避難所に集まる避難人数を想定してみる

    自治体がホームページなどで公表している人口統計の調査結果を活用すると、避難所となる小中学校の学区ごとに居住人口が概ねわかります。各自治体の「地域防災計画」に示された推定避難生活者数を、地域ごとの人口比で割り振るとそれぞれの避難所へ避難する人数が概ね推定できます。また、地域の人口が10,000人の場合、避難生活率が10%であれば、その地域の避難生活者数は約1,000人と推定されます。(地域人口)×(避難生活率)=(推定避難人数)仮に地域内に2校の小中学校があれば、1校あたり500人の避難生活者数が見込まれることになります。