SUPPORT

建築士事務所の業務報酬算定基準について解説しています。

概要

令和6年1月9日に国土交通省から「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準」として告示第8号が出され、これまでの基準であった平成31年国土交通省告示98号は廃止となりました。
ㅤ略算方法による場合の告示別添3の別表に明示のない「人・時間数」の算出方法や、標準的な人件費の参考資料など、詳しい内容は当協会の発行する「建築士事務所の業務報酬算定指針」をご覧下さい。

実費加算方法と略算方法

業務報酬の算定方法は「実費加算方法」と「略算方法」の2つに大別される。実費加算方法は基本的に旧基準と同様だが、略算方法については、略算表の見直し(特に戸建住宅)難易度補正係数の見直し、複合建築物の業務量算定方法が見直されている。

:実費加算方法

旧98号と原則的には同じで、以下に掲げる各経費を積み上げたものとなる。

1)直接人件費
  • 給与、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料等を含む。
2)特別経費
  • 出張旅費、特許使用料その他の建築主の特別の依頼に基づき必要となる経費。
3)直接経費
  • 印刷製本、複写費、交通費等。
4)間接経費
  • 建築士事務所を管理運営していくのに必要な人件費、調査研究費、研修費、減価償却費、通信費、消耗品費等。
5)技術料等経費
  • 設計の業務において発揮される技術力、創造力等の対価として支払われる費用。(目安としては直接人件費の50%程度としていますが、技術的助言(平成31年1月21日国住指第3418号4)にあるように当事者間による協議によって定めるのが適切です。)
6)消費税相当額
:略算方法

告示第98号による標準業務内容を行う場合に適用できる。

1) 直接人件費
  • 告示第8号別添3別表の建物用途及び延べ床面積から「人・時間数」を算出し、各事務所の実情に応じた時間あたりの人件費(一級建築士として2年又は二級建築士として7年の建築に関する業務経験を有する者(告示第8号別添三の9より))を掛けて求める。
    ※別表の面積区分の間の面積に対して、当協会発行の「建築士事務所の業務算定指針」ではその補間式を掲載していましたが、この改正時のガイドラインに倣い近接面積間の直線補間とされるようになりました。
  • 給与、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料等を含む。
2)特別経費
  • 出張旅費、特許使用料その他の建築主の特別の依頼に基づき必要となる経費。
3)直接経費と間接経費
  • 直接人件費に「1.1」を標準とする倍数を掛けて算出する。
    (経費内容は実費加算方法と同じ)
4)技術料等経費
  • 設計の業務において発揮される技術力、創造力等の対価として支払われる費用。
    (目安としては直接人件費の50%程度としていますが、技術的助言(令和6年1月9日国住指第307号4)にあるように当事者間による協議によって定めるのが適切です。)
5)消費税相当額
標準業務・標準外業務とは

略算方法で業務報酬を算定する場合、原則として告示第8号の標準業務全てを行うことが基準となっている。実際の業務では不要な業務や逆に標準業務に含まれない業務も発生する。

:標準業務
  • 告示第8号別添1に掲げる業務内容及び成果図書を作成する業務で、略算方法による場合はこの業務内容全てを行うことが基準となる。
    設計業務の内容が変わってきています。省エネ基準標準業となるため、その適合を条件とした業務人・時間数を考慮しているとされていますが、実態としては不明な点があると思われ、十分に検討される必要があると思われます。
:標準外業務
人件費資料

人件費は各事務所の規模や体制、地域性などによりかなり異なってくる。ここでは人件費の基本的な考え方と、想定条件による時間当たりの人件費の算定例を示す。

:直接人件費の考え方
1.「実費加算方法」の場合は、直接その業務に携わる技術者の1時間当たりの人件費(給与、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料等を含む)となる。
2.「略算方法」の場合、告示第8号別添3別表に掲げられる業務人・時間数は一級建築士として2年又は二級建築士として7年の建築に関する業務経験を有する者が設計又は工事監理等を行うために必要な業務人・時間数の標準を示したもので、上記以外の技術者が業務を行う場合も人件費はそれに相当する技術者が業務を行ったものとして算定する。

経験豊富な技術者が同等の業務を行った場合、業務時間数は少なくなるが、当然時間当たりの人件費はより高額となる。告示別添3別表の「人・時間数」はそれを前述の技術者ランクの業務量に換算したものである。

:時間額の計算方法(例)

告示別添3別表の「人・時間数」に掛ける時間当たりの人件費の算定方法は以下のような要領となる。

1.前述の技術者ランクの年間人件費を下記と仮定する。

技術者ランクについて、2020年度までは日事連の区分ランクを採用していましたが、発表されなくなりましたので、国交省技術者区分{技術者C」を対応技術者としました。令和6年では日額38,400円となっています。

2.1時間当たりの人件費の算定(例)
38,400円/8時間=4,800円となります。

あくまで前述の条件による算定例であり、各事務所の規模や体制、地域性などにより実情に合わせて算定しなければならない。

お問い合わせ CONTACT お問い合わせ CONTACT

CONTACT

協会の活動、建築設計に関するお問い合わせ、住宅・建物の建築相談等は、下記までお気軽にお尋ねください。