居住の都心回帰が始まって、様々な都市住居のあり方の提案がなされるようになった。都市に住む多様性が求められ、それに対して建築家が新たなライフスタイルの提案を積極的に行うようになってきた。この作品もそうした都市居住の空間を極めてシンプルに組立てている。低層部の店舗や駐車場を構成するラーメン構造の上部に、細分されたスパンの30cm厚の壁柱と同じく偏平の梁による構成とし、新しい架構方式を提案して室内を単純なキュービックな空間に仕立てた。 |
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付属するバルコニーを室内空間の延長と捉えて、屋外機や竪樋等を一切出さないように様々に工夫して、室内とフラットにした床面と共に、フルワイドでサッシュを見せないディテールによって引締まった空間を作り出している。前面に新国立劇場を見渡す事から、このバルコニーを劇場バルコニーと見立てて、都市居住は都会で起こる様々な出来事を観賞する場と提案し、劇場都市として規定される周辺地域に適合させている。シンプルで抑制された外観が都市的な景観を作り出す事に成功している。 (岡本 賢) |