郊外駅から10分ほどのマンション・アパートの立ち並ぶ一角にあって、他に比して、7層というやや高いシンボリックな感を与えている。
幅21メートルで、奥行きが100メートルあって、北側道路に面しているという、使いにくい敷地に66戸のワンルームで構成されている。両サイドも同様な敷地で、東側に向いて片側廊下の羊羹型となっている。
この立地のなかで、当計画は、南側向きの5棟を片側廊下で連結するという、思いきったものとなっているが、隣地あるいは自己の各棟間も、プライバシーを守り、環境的にも日照、採光、通風等の問題を解決し、良好な居住空間を作っている。
これは、各棟の住戸数、階数、隣等間隔などをかなり検討した結果であろう。中庭に樹木を配置したり、各棟連続の片側廊下の中庭側の壁が、通風と、視線を反しないようにするなどの工夫がよく、全体によく配慮している。 |
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アプローチには、ウェルカムの装置としてオープンスペースがあって、人と車を明確に分離し、また正面に見える各住戸内の廊下部分をガラス張りにして、それぞれにインテリアを工夫し、緑を活かすなど、各居住者の個性が表面に出るという共同住宅では考えられない手法が、外部に対して明るさとゆとりある室内として新しい雰囲気を与えている。
設計者と事業者とが地域性を考慮した上で、新しい試みに挑戦した結果の表れで、結果として事業を満足させ、居住者も満足したものとなって、かつ、近隣にも影響を少なくするという、なかなかのものになった。
最優秀作品として相応しい秀逸な建築と思う。 (小林 志朗) |