相模湾を越えて西方に富士山を望む絶景の地に建つこの施設は、(財)地球環境戦略研究機関(IGES)の本部施設である。IGESの研究内容に相応しい、環境親和建築のプロトタイプを創ることを設計目標の第一としたという空間デザインの特徴は特に、研究室とアトリウムに顕著に表われている。
まず大きく弧を描く研究スペースは高いフレキシビリティを確保しながら再生木を用いた縦ルーバーと大きなライトシェルフが日照負荷のほとんどを遮り、柔らかい反射光を室内に導くことにより必要照度の約7割を賄っているようである。しかも豊かな自然の眺望は損なわれていない。
次にアトリウム(少しオーバーな容積と思われるが)では、空間の高さを生かした煙突効果と地域の草越 |
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風による吸引効果は研究室床下の換気用電動ダンパーと連動して、建物の自然換気用電動ダンパーと連動促進し、エネルギー負荷軽減に大きく貢献している。
これらのパッシブな仕掛けに加え様々なアクティブな手法も導入されており、エネルギーの利用状況は常にモニタリングされて、管理者やユーザーにフィールドバックするシステムが構築されている。環境追親和建築を目指した設計意図は充分達せられているとの印象をうけた。
建築の内・外にわたるデザインも優れており、特に耐震要素の存在をほとんど感じさせない透明な空間構成には構造設計者の力量も存分に発揮されており、この点も評価したい。 (斎藤 公男) |