本記念館は、スポーツに強いことで知られる藤村女子中学校、高等学校の新校舎である。吉祥寺駅近くの住宅街にある敷地は、第一種住居地域で、6mと4mの2方道路にそれぞれ16mと64mが接する1000F強の細長い形状である。
本館の設計は、この厳しい立地条件で、普通教室と、多目的体育館、屋外運動スペースを収容する過大とも思える要求のもとに、「設計入札」という競争、選別を受けて採用されたものである。従って、ユニークな案とともに、コストも厳しく評価されている。
平面は、地上1,2階が教室、同じボリュウムの地下が体育館、屋上が運動スペースというシンプルなもの。構造は、地下に大空間をもち、教室階にも将来的にフレキシビリティを確保するためにPS梁による、26m×12、6mの門型フレームを長辺方向に連立させた明解なものである。
教室は、東側4m道路に面する横引きサッシュの外側に、半透明のガラススクリーンを設けることによって、道路を隔てた近隣住居との視線を遮りながら充分な採光と通風を確保するよう工夫されている。
|
|
体育館は、黒びかりするコンクリートの壁柱と梁の力強さが引き締まった空気を助長し、トップライトの自然光と、壁柱間の間接照明、そして両端の明るいガラス壁が柔らかい空気を感じさせる、地下とは思えない伸び伸びとしたスポーツ空間だ。
4m道路側外壁は、視線に柔らかい半透明のガラスに白い壁の縦ストライプトと視線を区切る横一線の数層の水切りによって、長大な壁としてはそれほどのスケール感も威圧感もなく、その均整のとれた美しい幾何学模様とともに、近隣への巧みな配慮が伺える。
主要道路は4m、地上2階建、同ボリュームの地階、200%の容積いっぱいという、まさに施工者の知恵と工夫と努力のほどがしのばれる。
高価な材料も使わず、特別なデコレーションもなく、シンプルで,堅実なデザインの中に,数々の工夫を織り込んだ、設計と施工それぞれ一流の作者達が手塩にかけた一品,記念館にふさわしい、すっきりした印象をうけた佳作であった。 (加藤 幸三) |