都心の住宅地の中に建つこの住宅は、道路に面した外観に繊細なルーバーを取り付けた清楚な外観を持つ。一階が駐車スペースになっているが、道路との引きをとり、アプローチに配された植栽も外観に表情を与えている。
アプローチから中に入ると住宅の中心にある大きな吹き抜けにでる。大きなトップライトから光が落ちてきて、やわらかく明るいエントランスホールになっている。設計者は当初ここを外部とするか、内部とするか迷ったそうだが、結果として内部に取り込んだのは |
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正解であったように思う。外部にした場合、サッシュなど雨仕舞いのため様々なディテールが出てきた時、現在のようなカランとした快適さはなかっただろう。
この住宅で光るのは突出した作家性というより、選択の正しさと的確さであろう。その吹き抜けの周りを階段が取り囲み、その前後に居室が配されるという手法自体も都市住宅として特に目新しいものではないが、そのスケールや素材の選択によって、この住宅に緩やかな中心を作り出すことに成功している。都市住宅の普遍解の好例を見た思いである。 (篠原 聡子) |