9室からなる小さな集合住宅であるが、そこには設計者のこだわりが満載である。まず住戸を2軒の間口に絞込み、筒状の住戸の前後には開口がとられている。そこの真中にキッチンとバスルームが配され、細長い住戸の長さをさらに強調している。特に筒の中心に据えられていてたバスタブがこの住戸の最大に特徴であろう。そのバスタブの脇にバルコニーがとられ、筒の中心にも外部との接点をとっている。この扱いが細長い空間の閉塞感を解消している。僅かの隙間にうえられた竹もきいている。写真でみるとその突出したインテリアばかりが気になるが、実際に体験してみると構造的な整理も行き届き、完成度の高い建築である。 |
|
9室程度でエレベーターを使わなければ、集合住宅もいろいろな集合形態が可能である。その可能性の一端を開示している。
住居への嗜好も多様化している。イッセイやギャルソンを着るように、プラダを持つように住宅も選ばれる時代になった。賃貸住宅ではデザイナーズマンションというジャンルまでできた。そうしたジャンルの中では集合住宅が背負ってきたおけるある種の社会性が色あせて見えるが、それ自体は悪いことじゃない、そう思える建築である。こうした選択肢があってもいいと思えるのである。
(篠原 聡子) |