この住宅は、70歳前後の老夫婦とその長男夫婦次男夫婦が同じ敷地に住むためのものであり、お域にあって、大屋根のもとで3世帯を1軒の家としてデザインし、真壁構造や外壁の色彩などにより、環境にとけ込むよう配慮されている。
3世帯の住居には各々生活時間帯の異なる家族が住むので、それぞれの住まいの独立性を保つために様々な工夫がなされている。老夫婦の家は、南北両側に広い縁側が設けられているが、南側は家族や近所の人々との会話をする場所として、北側は独立した縁側として老夫婦が静かに時間の流れを楽しめるようになっている。長男夫婦の家は、前面道路に面したゲストハウ
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スとしての機能を持ち、次男夫婦の家は、主要な開口部を南側に設けるなどして、長男夫婦との視線の交錯を防いでいる。
一緒に住むことのメリットを共有するための工夫として、3世帯が共有する中庭を設けている。四季折々の行事の場であると同時に、縁側は近所の人々とのふれあいの場として考えられている。
このようにこの住宅は、環境への配慮が十分なされているほか、3世帯が程良い独立性と、ふれあいが図られているという点で、優れた住宅計画であり、東京都知事賞にふさわしい作品である。
(野本 孝三) |