八王子市郊外の高尾の森に計画された高尾森林センターは、森林環境教育、森林・林業の情報発信、ボランティア活動などの拠点づくりが目的とされている。
沢筋に立地するため、RC造で主要空間を浮かせ、快適なふたつの木造木質空間を実現している。ひとつは門形の集成材フレームの連続によって構築された直方体の学習・研究棟であり、もうひとつは彎曲集成材の格子フレームとこれも集成材の斜め柱で構築された彎曲半ボールト空間の交流空間である。
どちらも、架構のみならず、床、壁、天井、ルーバーにいたるまで木を使用することで、木質の持つ、暖かく、柔らかな、肌触りの良い空間が実現できており、本施設の目的に相応しい建築となっている。 |
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特に、ディテールの工夫が南面ファサードのシャープな外観だけでなく、内部からも、周辺の森への眺望を豊かなものにしている。また、彎曲した半ボールト空間は、まさに木にくるまれたような落ち着いた居心地の良さを感じさせ、秀逸である。限られた予算の中で、密度の高い、設計、施工に敬意を表したい。惜しむらくは、管理上の問題であろうが、アプローチの林道が閉鎖されていたり、作業コーナーが物置きのように使われていたりと、管理運営上の問題が散見された。せっかくの施設が充分に活用されることを願っている。
(栗生 明) |