この集合住宅は、郊外に建つ賃貸用のメゾネット型1LDKという一般的なプログラムをもつが、計画手法とデザインにおいて、様々な建築的工夫がなされることで優れた建築作品となっている。
まず、配置計画上の工夫としては、南北に長い敷地ということもあり、南側・北側の2つの棟に分かることで、周辺の建物とのヴォリューム上の連続性を生み出すことを意図している。もっとも感心させられるのは断面計画であり、高さ10Mの制約の中で、1階アプローチ用ピロティ、2階LDK階、3階寝室階、4階LDK階という、いわゆる4階建てを寸法上の細かい工夫を行なうことで成立させていることである。これにより、居室階が2階以上に設けられるため居住性
も高まり、2棟のヴォリュームが浮遊するという建築 |
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表現も得られた。この断面計画が、各棟の平面計画において、中央に動線および水周りをまとめて、外周面に居室を配置することを可能にしている。更に、意図的に歪ませた平面形とすることで、様々な形状の居室が生み出され、かつ、両方の棟の居室の窓が、真正面に対面することを避ける効果が得られた。テラス空間を掘り込む形に設け、外観のデザイン性を高めると共に、LDKとのつながりの良い、プライバシーの高い半外部空間も作り出されている。
以上、この集合住宅は、様々な斬新な建築的工夫を行うことで、集合住宅の一つのあり方を示しており、優秀賞にふさわしい作品となっている。
(小林 克弘) |