敷地は、南面する道路に対して25m角に少しずれた平行四辺形、周辺にマンションも建つが、南平台の歴史ある町名が示すとおり落ち着いた住宅地にある。
本計画の特徴は、ほぼ四角の敷地に1フロアを田の字に切って、ウッドデッキの解放廊下で4戸(4層、全16戸)を結び、独立性を確保したことだろう。
これによって、プライバシーの確保と通風、採光は
通常の羊羹切り、田の字マンションとは比較にならない程よい。この賃貸住宅のオーナーと住人の大いなる満足が想像できる。
ファサードは、打放しコンクリートの外壁と、ベランダを思わせる黒い木製のプランターボックスやスリットによって直線で構成された、抑制のきいた端正な表情をもつ。
エントランスは、ガラスのスクリーンで構成され、最初に目に入る、その端部は、厚15のフロートガラスを3枚縦に並べた小口をみせて注目させる。つづくメールボックスの投入口は、ガラスに口をあけて4段16個がきれいに並ぶ。
さらに正面のエントランスドアは、強化ガラスを竪
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鎧に張ったもの、透明感のある導入部のデザインは秀逸である。
解放廊下は、壁、天井ともコンクリート打放し、床に組み込まれた照明器具は、その階と下階を照らす。同じように壁に組み込まれた照明は、廊下と階段室に明かりを広げる。また手摺や目隠し壁もグリット化されたガラススクリーンであり、すっきりしたシンプルな空間である。南北の棟の間は手ごろなスペースの中庭であり、北側を塞ぐ5mの擁壁は、緑の借景として巧みに処理し落ち着いた裏庭の趣である。
住戸は、RC壁式ヴォイドスラブ構造による整形な空間を生かして、将来のニーズの変化にも柔軟に対応できることを伺わせる。
良質な賃貸住宅、箱としての、住み心地のポイントは、「プライバシーと通風の確保」と考えると、四面解放のこのマンションは、窓の外の廊下を隣人が通るのは16戸中1戸に過ぎない。
完成度の高いデザイン、工夫をつくした各所の納まり、熱意を感じる施工精度など充分に高い評価に価するものと判断した。(加藤 幸三) |