東京・赤坂に完成したこの建物は、院内感染防止をメインコンセプトとして、ディスポーザルの医療機器の製造販売で、成長し続けている企業の本社ビルである。オフィスビル街ではないこの場所に、街との適切な距離を保ちながら、かつ企業の顔として地域に貢献できる建物をどうつくるか、かつ第一のテ―マとされている。
交差点ではあるが、不整形の立地条件を逆手に取りながら、建築と都市、形態と空間、機能と技術といった諸課題が明確に整理され、鮮やかな建築デザインが展開されている、との印象がもたれた。
そのポイントは、無柱で矩形の事務空間(ユニバー
サルスペース)と、敷地境界からの壁面後退線をなぞった不整形な皮腹(外部が生み出す形)をかぶせることによってできる空隙をダブルスキンとしたことであ
ろう。ここに、吹抜空間、階段、リフレッシュスペー |
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ス、水平ルーバー(日射+視線制御)等を組み込むことで、ダブルスキンを総合的な環境装置として、機能させることかに成功している。敷地形状と実質的な建物形状を補完する緩衝空間が、同時に外部環境と内部環境の親密性を調整する役割を担っているとも考えられる。
設計者が設計の力点の一つとした、ガラスファサードのデザインも新鮮である。水平リブ(強化・合わせガラス)の磨かれたエッジが、垂直面のガラスを突き抜けており、この建物に固有で魅力的な表情を与えている。
完成後の施主(保木社長)側の評価も高く、この建物が地域性・機能性・運用性・快適性などが高度に結実されたものであることが強く感じられた。
(斎藤 公男) |