本ビルは、北東面を旧山手通りに接し、246号線 道元坂上から100M程南にあり、周囲にはオフィスビルも多い。
貸しビルとして計画されたビルは、躯体にプレキャストコンクリートを採用し、ほとんど内部仕上げを施さないスケルトンオフィスとして、フレキシブルな貸しスペースを確保するとともに、オフィスから飲食にも対応可能な多様性も持っている。
ファサードは、各層にメンテナンス庇を設けることで横ラインを強調するとともに方立の縦ラインと合わせてバランスのよい緊張を保っている。この小庇は、ファサードの表情を引き締めるだけでなく、ガラスの汚れ防止にも大きな効果をもたらすだろう。
簡素なエントランスから上階のオフィスへ。オフィス空間は、色調をおさえた床のOAフロア、壁の塗装
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は施されているが、天井はない。ダクト、ケーブルラック、RC床版は露わしであるが、活気のある、服装もまちまちの人々が立ち働く様子から違和感はない。むしろ少々荒っぽい雰囲気の空間は、働く人を生き生きさせるように感じる。
ファサードには、複層ガラスを採用し、一部開閉可能として自然換気の配慮もされている。南面は近隣のプライバシーも考慮し、最小限の開口としている。屋上は、木製デッキと緑化が施されるなど熱負荷の低減が積極的に図られている。
本ビルは、貸しビルとしての効率を追求しながら、人が主役の空間を演出し、統制のとれた外観で街並みに規律をもたらしている、若い設計者の熱意に敬意を表したい。(加藤 幸三) |