この住宅は、海外勤務が多い50歳代の夫妻と、既に社会人のご子息一人が住むためのものである。落ち着いた住宅地は、この家を含めて2期目の建替え時期に入っているようである。敷地は、雛壇型に南に下がり
、見晴らしと、風通しの良い場所である。設計者は、その南北に流れる「風」を建物に「通す」ことに主点を置くことを目指した。
平面は、半地下に車庫を取り込み、RC造で基礎と一体化し、1・2階は、木造のアルミボックスとウッドボツクスを並部べ、中央に「風」が通るように居間を配した、三枚おろしの構成である。一段上がった車庫上階のポーチから中に入ると、高く吹き抜けた居間
|
|
は、南面が広く開け、家々の屋根が俯瞰できる眺望である。左右の壁上部には、2階居室への風道窓が、5枚の片開きで縦に切れ、天井は木の軸組が現わしで、夫々リズム感を与えている。
隣の食堂・台所は、床を一段下げて庭への動線を確保してもいる。長く伸びた幅広なカウンターは、余裕があり主婦の居場所の提供になっている。主人の居場所は、ボックスを繋ぐブリッジの2階に格好な書斎の形で用意されてある。欲を言えば植栽まで手が回らなかったと見受けた。然し都会のサラリーマン家庭が描く生活実態を的確に見据えて、遊びを抑えた好感の持てる中規模住宅である。(北村正信) |