「国際子ども図書館」は既存の旧帝国図書館の建物を保存・再生したものである。旧帝国図書館は東洋一の図書館を目標に設計され、当初計画は中庭を持つ、「ロの字形」の壮大なプランであった。明治39年に第1期工事が、昭和4年に第二期工事が竣工したが、その後計画は中断され、当初計画の1/3の姿に留まっているものの、ファサードや閲覧室、貴賓室は創建当時の荘厳な姿を今日に伝える貴重なもので、東京都の歴史的建造物にも指定されている。
設計者は、貴重な外装・内装を保全しながら耐震性能を高めるため、免震レトロフィット工法を採用したり、鉄骨ブレースで補強を行うことにより、屋根の木
造トラスを保存するなど構造上の工夫をしている。保 |
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存部分の外装はもともと化粧煉瓦や白丁場石を積んでいるが、部分補修を施し明治以来の風合いを残している。壁と天井は漆喰及び精緻な漆喰装飾であったが、新たに漆喰を施し、瀟洒な空間の復元に努めているほか、施工に当たって現場調合の在来工法を採用するなど伝統技術の継承にも留意している。
人の動線を確保するためにガラスの廊下や玄関を増築しているが、カーテンウオールの方立てをそのまま柱とした透明性の高い構造とし、既存の建築の煉瓦や石の風合いを際立たせると同時に、既存のデザインと共生した新しい空間を生み出すことに成功している。
(野本 孝三) |