護国寺の門を右に見て不忍通りを目自に向い、首都高速のガードを過ぎると左側に打ち放しコンクリートのシンボリックなフォルムが目に映る。内部構成により分節された外観は、開発を免れた建物が残る目白台界隈の環境にも違和感を感じない。
建物はオルゴール収集家であるオーナーのコレクションを展示・演奏し、研究活動も行う博物館である。
不整形で狭い土地でありながら、その特性を生かし立体的に構成された建物は誠に心地よい空間を作りだしている。適所に設けられた吹き抜け・光庭は光の演出と共に平面的な狭さを空間の連続性で補い、小さいながら楽しい博物館として仕上げられている。
|
|
打ち放しコンクリートの無機的な外観、木を多用し素材に拘ったインテリアが、19世紀の人々が作り出した精緻な機械と誠に良くマッチしている。またこのアナログマシンが奏でる音色は暖かみのあるインテリアに艮く響き、デジタルに疲れた体を癒してくれる。
躯体構築に見る純RC、扁平柱、プレストレス梁の裸用など、持てる技術のバックアツプも見逃せない。大手組織に所属する個人の思い入れがうかがえる。
各所に見られるオーナー側からのアイデア、設計者の拘り、作り手のきめの細かい施工、三者の連帯感が感じられるこの珠玉の作品は優秀賞に値する。
(秋元 和雄) |