シドニーオリンピックに出場した水泳の萩原智子選手を記念してつくられた25M公認水泳場である。
正面からの形態は、構造をそのまま表現した、美しい「反り」をもつ屋根が透明感いっぱいのガラスカーテンウォールに乗っている。青空に溶け込むような、軽やかで、清々しい印象である。
屋根を構成する架構には、サスペンション型張弦梁を用いた新しい吊り構造システムを採用することによって、下部構造への負担を減じ、工費、工期の削減にも効果を得たという。
「記念水泳場」の銘を刻むグレーの壁をみてエントランスに入ると、右手に、光を受け止めるタペストリーガラスの大スクリーンに泳ぐ萩原選手の顔が大写しに輝く、鮮やかな、記念施設への導入部だ。
つぎに、左手の幹線道路に面した通路は、壁全面に萩原選手を含む、学園水泳部の活動が広がる。夜は、
道路からも見える36Mの大ギャラリーとして浮かび
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あがる。学園のショーケースの役割は、充分に果たしている。
プール棟内部、緩やかにカーブする天井は、小梁の集成材によって目にやさしい。プールサイドのコンクリート打放しの壁と四周のガラス面、そして静かな水面のプール空間は、シンプルでむしろスイマーや色とりどりの観客が入ることによって、彼らを引き立て、躍動する空間に変貌することが容易に想像される。
解放的なプール空間は、昼間は自然光だけで利用できるほど明るく、自然通風や、日射、プール水などを活用した省エネルギーにも配慮している。
華やかに装飾された見事さではなく、実用、利便、効果に徹した機能施設の素晴らしさを充分に備えた美しい記念施設、設計者たちの、何を創るか、を吟味した結果がさわやかに実現したもので、見学したあとの清涼感は格別であった。(加藤 幸三) |