学校法人三室戸学園東邦音楽大学のメモリアルホールとして、川越キャンパスに建設されたこのコンサートホールは、620人収容の専門音楽ホールである。シンプルな平面型で、クラッシク音楽を中心に様々な音楽教育に対応させている。小規模ホールにもかかわらず、バルコニー席を設けてステージとの一体感をさらに高めている。前面の上下可動ステージによってフルコンサートやオペラ対応も可能とさせて、様々なカリキュラムに応じられる多目的性を備えさせた。木質系を中心としたシンプルな内装のデザインが、冴えた音の響きを予感させてくれる。キャンパスの中心広場に向って大きく開かれたホワイエは、奥へカーヴして |
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人々を招き入れる。カーヴした壁面は鉄骨柱から持ち
出されたV字の梁によって、軽やかに浮いている。この巨大な曲面壁は西日を遮る目的に加えて、造型上の特徴となってこの建築の存在感を際立たせている。押出成型アルミパネルの堅い表情と、割肌タイルの粗い質感が微妙にマッチして、簡潔なディテールと共に端整な表情に仕上がっている。足元に配した水面から光の反射が内部に映り込んだり、明るい芝生庭との連続性等、きめ細かい配慮もされている。これだけのホールは地域住民にも広く開放されて、大学と地域コミュニティとの一体性の核になっていく事と思う。
優秀賞にふさわしい作品である。(岡本 賢) |