駅前開発により移転された新しいキャンパスは、郊外私鉄駅近くにあるが、駅との間の東側には大規模な墓苑や隣接した送電線などがあり、決して恵まれた環境とはいえない場所にある。敷地の形状も旗竿型で面積の割には有効利用しにくい形である。また、時間的な制約があり、設計期間も施工期間も約1年と非常に制約されたプロジェクトである。
そのような条件下で、本計画はそれぞれの制約条件を見事に解決し、計画に活かしている。まず、配置計画ではグランドを真ん中に挟み、北側に体育館などの運動施設棟を配し、南側に校舎棟をコンパクトに纏め
、両者を繋ぐ2階の渡り廊下は隣接する墓苑を視覚的に避けるため緩やかなアールの屋根と壁により目隠し
、その階下にさり気なく自転車置き場を配するなど見
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事である。
校舎棟は、ここで過ごす全ての生徒と教職員のふれあいを大切にすることをテーマにし、校舎の中心に設けられた中庭は、広々とした階段状のテラスで光と風などの自然にあふれた語らいの場になっている。構造的には、高さ制限と工期短縮のためスラブをプレキャストコンクリート化し、木材の伐採に繋がるベニヤ型枠の使用を最小限に抑えて、地球環境の保全に務めている。また、クール・ヒートトレンチ方式を採用した空調や、眩しい直射日光を遮るライトシェルフを設け
、庇の上で反射させて、柔らかな光を教室の奥まで導くなど、いろいろな工夫により環境に配慮した秀作である。(西倉 努) |