横浜山手のメイン通りは、質の高い洋館や住宅が、緑と一体になって、良質のまちなみを残している。この集合住宅は、横浜山手のメイン通り沿いの大きな屋敷だった敷地に、高級分譲集合住宅として開発されたが、横浜山手のまちなみに十分な配慮を払い、いわゆる高級マンションがもつ仕上げの豪華さを誇るような施設ではなく、抑制されたデザイン、空間構成上の工夫、適切な素材の使用によって、洗練された住環境を生み出すことに成功している。
施設全体は、道沿いのエントランス棟と奥まった18戸からなる住居棟で構成される。エントランス棟では、既存の石塀と樹齢200年を超える木々の佇まいを最大限残すために、前庭と車寄せを広く設けて、建築自体は、水平・垂直の線と大きなガラス面による抽象的かつ慎ましいデザインとなっている。これは、道か |
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ら目立たせるというよりも、エントランス内部から周囲の木々を感じ取れることを意図した結果でもある。
住居棟は、3階建てで、各階に、EVと階段を共有する2戸が3組ずつ配置されるという、いわゆる階段室型の平面計画であるが、EV前のホールから、横浜を遠望できる空間の抜けを設けるなどの工夫がなされている。敷地南側は、土地が低くなり、快適な眺望が確保できるという好立地を生かすため、部屋の南にバルコニーを設けず、大きな開口から直接眺望が楽しめるという平面計画上の工夫もなされており、回遊性の住戸平面、多面開口を伴って、快適な内部空間が生み出されている。
これらの建築的工夫によって、本作品は、まちなみと馴染み、快適な住空間を備えた良質かつエレガントな集合住宅となった。(小林克弘)
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