靖國神社の境内において、本殿・拝殿・到着殿と結ばれる位置に計画された本建物は、靖國神社創立150周年記念事業の一環として、老朽化が著しい旧参集所に替わる施設として建設された。設計主旨は明確であり、次の3点に集約されている。すなわち
1)参拝者が使いやすく管理しやすい建物であること
2)周辺環境との調和に充分配慮すること
3)2000年以上の長寿命化を技術的に実現すること
主旨
1)に対しては、明快なゾーニング計画、動線が交錯しない計画、高齢者に配慮した計画等がなされている
。また、主旨2)に対しては、周辺の既存建物との視 |
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覚的調和、特に本殿との高さと伝統木造の普遍的表現に重きがおかれている。そして本建物が最も評価されるもののひとつは、主旨3)に対する構造・施工への工夫と努力である。RCや鉄骨といった今日の材料を基本としながらも、日本の伝統木造構法のもつ更新性を継承し、かつ数百年に一度の割合で発生されると考えられる大地震に対しても、大きな補修なく使用可能な耐震構造を実現している。制振装置の性能実験や構造計画における数々の検証、独特な軒反りの数値化とモックアップなど、これまで蓄積してきた実績を踏まえた設計と生産(製作・施工)が高いレベルで結実した建築として高く評価したい。(斎藤
公男) |