世田谷区代沢の個人住宅を、３層７住戸からなる賃貸集合住宅へと建替えたものである。周辺には旧首相邸もあり、緑が多く閑静な住宅地である。設計者はまず敷地前面の街並み、魅力の再構成と向上をめざした。軒を連ねる大谷石の塀を連続させ街並みに統一感を、前面をセットバックさせ、敷地の南西角既存古木の桜を残し建物におおらかさ・ゆとりを加える事に成功した。
メインエントランスからスロープを下がり中庭へと導かれるが、ここは地下から地上３層を貫く光庭となり、杉板本実化粧打ち放し仕上げの外壁は静謐な印象を与えている。
この中の外階段は軽やかで瀟洒に納められた。
７住戸は各々１４２〜２３２ｍ２ありプランは変化
|
|
に富む。第１種低層住居専用地域の高さ１０ｍの制限内では、天井高も通常程度、住戸内の開口も多くはないが、目線の抜けを意図的に創ることで、暗さ重苦しさを解消して、落ち着いた内部空間を創り出した。
構造は鉄筋コンクリート壁構造とし、住宅の居住性に配慮、外観をシンプルに表現する事ができた。外壁は塗装壁クシ引き仕上げとし、グレー系の落ち着いた色合いの中にスラブをそのまま表し、水平線のアクセントで印象的にまとめている。仕上げ材を高価にせず品格をあげる事に成功した「いぶし銀のような秀作」であり、地域との係わりを大切にとのテーマが生かされた共同住宅であると評価され、最優秀賞･東京都知事賞に選定された。（泉 晃子） |
