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【南長野歯科医院】
 
 
設計者 建築施工者 建築主
ヒロ・デザインスタジオ+OUVI 川崎建設(株) 酒井 康人
 
■建築概要  
建設地 長野県・長野市
RC造
診療所・住宅
延面積 273.92m2
 
■審査評
 100年を越す旧家や蔵が点在する集落で白桃畑や田の広がる豊な田園地帯の一角に建てられたオーナーの歯科医院付き住宅である。敷地は、親元の旧家の屋敷を分け隣接している。耐久性、更新性を重視、居心地の良い空間をテーマとした建物は、母屋からの眺望の確保や周辺環境との調和から、高さを3.7mほどに抑え平屋で計画された。外観は、コンクリートの箱を3つ断続に連ね開口部一杯にガラスを嵌め込み、抜けを2つのガラスの箱で接続、全体をホワイトに統一したシンプルな形態である。アクセントの斜めにカットされた庇は、診療に支障がない日射の制御のできる出が考えられ、色調、形態は、点在する蔵の漆喰や形をデフォルメしている。このことで屋外広告が厳しく規制されている周辺地域に落ち着いた存在感とともにサイン性にも優れた効果が期待でき好感が持てる。
 1棟の建物は、2つのガラス箱の玄関により東側を
  待合室と歯科診察室の結節部、西側を診察室と住宅を結び、明快なゾーニング・動線で職住を見事に分離し、オーナーの意識転換にも役立ち巧みである。構造は、最大10m四方のスパンの無柱空間を実現するため、壁、屋根とも300mm厚のコンクリート壁式構造とし、予め撓み量を想定しPC現場打ちが試みられ成功している。大きな開口からの風景を額縁のように切取った診察室は、日中、照明なしでも明るく空調バランスもとれ、塞ぎがちな患者への癒しになっている。何よりも、床下設備スペースで将来の歯科ユニット増設や配置換えが容易であり更新性、可変性が高く、長寿命な建物として評価できる。敷地には南北に計画道路があり、道路完成時には北側からの玄関は、南側からの出入り可能な計画もあり、デザイン的な創意に溢れた作品で秀作である。
  (福島 賢哉)