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【山梨県立博物館】
 
 
設計者 建築施工者 建築主
(株)梓設計
山梨建築設計監理事業協同組合
鴻池組・長田組土木
河村工務店・建設共同企業体
山梨県
 
■建築概要  
建設地 山梨県・笛吹市
RC造
博物館
延面積 8760.89m2
 
■審査評
 山梨盆地の中心に位置する県立博物館である。敷地は、周辺に耕作地の広がる緩やかな丘陵地中腹の風光明媚な桃畑跡地6.5ヘクタールと恵まれた土地である。
 「山梨の自然と人」をテーマとした施設は、従来の箱物行政と酷評された見学主体型ではなく、来館者自ら参加、体験、交流のできる「新世代型博物館」を強く意識した作品となっている。
 駐車場から館内入り口まで導かれるように演出された塀や里山、エントランスへの景観は、建物への存在感を高めさせている。敷地の中央にある建物と周回庭園には、甲斐の山並みを見事に取込み建物からの庭園をとおした大自然の眺望とふれいあいを大切にした配慮が感じられ巧みである。
 平屋の外観は、外壁のスレンダーな深い軒、庇や細
  い列柱、ガラスの開口部の組合せ、閉鎖的なタイル壁やエントランス前面の水面と中庭を視覚的に連続一体化させ開放的なガラスのファサードで威圧感のない落ち着いた佇まいに仕上がっていて好感が持てる。
 平面では建物を南北に、南側を情報・展示、北側を収蔵・管理部門に分けられている。展示、収蔵スペースでは天井高さ6mが確保され、ゆったりとして様々なシーンで充分な活用が感じ取れる。特に調湿材を使った2重壁、置屋根の断面は、自然の温湿度調整による収蔵物の恒久的な保管や空調負荷の低減に役立っているほか、氷蓄熱式の空調で省エネルギーにも配慮していて好ましい。ユニバーサルデザインを重視した博物館の増築をも織り込んだ計画は、今後さらなる期待を感じさせ最優秀賞にふさわしい作品である。
(福島 賢哉)