横浜市で最初の保育園と幼稚園の機能を融合した施設である。子どもが主体的に自発的に行動したくなる環境づくりを幼児教育と空間設計のコンセプトとし、園全体に様々なあそびの仕掛けが仕組まれている。大階段と巨大ネットが空間を占めている多目的ホールを囲んで、一階を保育園、2階を幼稚園とし、左右に各教室群が囲んでいる。教室にはナースステーションが先生の教材、居場所として教室の子どもたちを見守る位置に配置され、入口にある教職員室は主に事務室となり小さい。
作者の長年の子供環境への研究成果を存分に発揮し、子どもたちの遊びの構造化を図って成功している。どこにも行き止まりのない、遊環構造という遊びの動線を立体的に組み立て、子どもにしか通れそうにない狭い階段、はしご、トンネル、そしてスリルも味わえるネットなどが主に2階の幼稚園のホールまわりに楽しい環境を作り出している。
|
|
外部空間にも存分に回廊遊具が園庭をとりまき、櫓やはしご、滑り板、ネットなど地形を巧みに利用して、遊環構造を作り上げている。
建築的には2層立体通り抜け空間を目的空間がはさみ、PC屋根版が切妻屋根で覆うという単純な構成であるが、PC屋根版工法の特徴を生かして、2階教室ごとにスリット状のトップライトを設け、空間の分節を光で行っている。
空間構成がおおらかで幼児としては大きな空間が多いこと、遊環構造という活動的な空間構造が特徴的だが静かな集中する活動に対する空間が少ないことなどが課題といえるが、基本的な子どもの全身を使ってエネルギーを発散することのできる空間としては他に類をみない、工夫に充ち溢れ、楽しい環境が創り上げられているすばらしい作品である。
(中村 勉) |