住宅地に建てられた音楽大学の個人レッスンのための専用建築である。
敷地いっぱいに、しかも北側斜線に切りとられたコンクリートのヴォリュームがまず設定され、バイアスのかかったグリッドで切り刻むことにより多様に変形した15の個人レッスン室と魅力的なヴォイド空間が作り出されている。
このトポロジカルな空間は一見、遊戯的な空間操作による造形と見られがちであるが、音響上、部屋の壁や天井が平行になることを避けると同時に、各レッス
ン室の独立性を確保することで周辺住宅地とのスケー |
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ルの同調や採光、防音を考慮した結果である。
変形されたグリッドラインは、開口部や仕上げや目地の位置などにまで徹底して援用されているため、カオスを生み出すのではなく緊張感のある静謐さを生みだしている。
特に地中に穿たれた中庭は狭いながらも音楽のレッスンに疲れた学生に静かな安らぎを与える光の庭になっている。
町中の音楽レッスン室群という特殊な機能に対する見事な特殊解として評価できる。 (栗生 明) |