西早稲田にある虫封じで著名な穴八幡宮境内に新しく出来た社殿。江戸寛永時代に出現したという、神社名の由来の元である神穴を整備し、その前面に拝殿を設け、合わせて出現殿とした建築である。
神穴は石造で構築し、全面の拝殿は伝統木造建築に総黒漆仕上げとしている。神社に彩色を施すのは神仏習合以降とのことであるが、総漆塗り仕上げは新築建築物において用いられることは殆どないめずらしい仕様で、当境内においても初めての試みである。木材の割れや、下地処理、塗装厚さの管理等の課題に、設計者、施工担当者ともに熱意を持って取り組み、伝統建
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築を守ろうとする高い意欲が読み取れる。構造的には
、耐震化架構体の実験を行い、柱の傾斜復元力、貫仕口,耐力板壁等を効果的に耐震要素に取り入れている。また、CADにより作成した軒廻りの原寸図を現場に掲げて決定し、それらを数値化数式化して規矩術の現代化に取りこむ等、伝統と現代技術の融合による伝統美の再現という意図は十分に達せられている。
境内全体整備計画も逐次進められており、山門も以前当賞を受けている。このように、一つずつ着実に本物を完成していくという建築主の姿勢も併せて評価したい。(北 泰幸) |