地震から建築を守る方策として、免震構造がすっかり定着しつつある。今年の応募作品の中にも、免震構造を採用したものが多く見られた。そしてそのほとんどは、最下層と地盤との間に免震装置を組み込んだ基礎免震方式を採っている。
それに対して地下一階、地上7階建てのこの建築は、1階柱頭部と2階床梁の間に免震装置を配置した中間層免震構造としている。このことは、市街地の限られた敷地に建つ免震建築における回答のひとつであろう。しかしここでは、それよりも建築の安全性を視覚的に表現するためにとられた手段であったと聞く。
この中間層免震構造が、建築全体の表情を大きく支配している。6層分の荷重受けて背が3mにおよぶ2階の床梁は、道行く人が見上げる位置に浮かび、それ |
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を支える耐震壁は1.9mの厚さをもつ。これらは建築的なスケールを超えているようにも思われるが、様々な設計上の工夫により威圧感を感じさせない。施主が土木コンサルタントであることから、敢えて土木的なスケールを建築に持ち込んだとのことである。それらを破綻無くデザイン的に昇華している設計者の力量が、並大抵ではないことを窺える。
無柱大空間の実現、プレキャストコンクリートによる端正な外壁面の構造デザインなど処々に、関係者それぞれが全力を傾けてコラボレートした成果であることを感じ取ることができる。個々をあげつらえば異論があるとしても、力作であることに異論はないだろう。(金田 勝徳) |