別荘の点在する軽井沢に建てられた週末住宅である。建物は、北側前面道路から南西に急緩二面の傾斜のある敷地で、
まとまった唐松林を避け、傾斜の強い西端に寄せている。
直方体の高さの異なる木造の箱を斜面から水平に持ち出されたコンクリートスラブにL字型に載せ、
傾斜とのあきに居室を埋め込むフォルムは、充分に残された樹木と緑に抱かれ、自然に溶け込む表情豊かな効果を印象づけている。
何より自然を満喫できることを重視した空間構成は、北側の玄関を基点に斜面方向と西北方向を矩手につなぎ、
部屋ごとに開放性と閉鎖性といった性格付けをし、眺望の楽しみかたを工夫していることだ。
これを成立させているのは、外壁に開けられた多様な大きさの窓であり、室内の天井高さの変化だ。
ダイニングキッチンは、他と一段高い天井と大胆に開けられた全面ガラス窓で内外が一体化され、
眺望の利く明るく開放感のある豊かな空間となっている。
そして、連続した居間は天井を低く窓の大きさを限定し、落ち着きのある空間が生まれた。
みどりの溢れる季節には、ほぼ白に統一した室内に緑陰を映り込ませ独特の空間を演出している。
葉の落ちた季節は浅間山の遠景が望め、四季の移ろいを存分に感じ取れることに成功していて巧みである。
黒の木製羽目板とした外壁に啄木鳥による損傷も見受けられ、定期の塗り替えなども気になるが、
全体的にこなれた堅実なデザインでまとめられ秀作である。(福島 賢哉) |