現地には西武池袋線の秩父駅からタクシーで向かったが、地元の運転手に地図を示しても解らず、
途中まで設計者に迎えに来てもらいやっと辿り着きました。町の生活道路から逸れて、むかし別荘地用に分譲された区域をひと山越えて、
ふた山めの最奥部にその建物はありました。
その道は『いろは坂』も、しのぐ急カーブの連続で、冬場は凍結して普通車では登れない急勾配の道でしたが、
その敷地から北東に開けた自然は絶景そのもので、人造物が視界に一つも入らない環境豊かなところでした。
計画はその自然を視界的にも空間的にも大きく取り入れる工夫が随所になされて居り、
建物は地下と1階がコンクリート造で2階部分が鉄骨造で構成されております。
コンクリート部分は薄肉ラーメン造で北側傾斜に合わせて大きな開口を取り、南北方向のみに壁を配置してあります。
鉄骨部分は下から連続したコンクリートの少ない壁で水平力を負担し、
60角の鉄骨無垢柱で鉛直力を負担させる構造になっており開放的なプランを巧みに演出しています。
また、玄関のピロティーや寝室部分の廊下には大きな開口部にも拘わらず全開放できる引き込み戸を設置するなどして、
色々な空間の使い勝手が用意されている楽しい住宅でありました。(西倉 努) |