典型的な旗ざお敷地に計画された全８戸の集合住宅である。
路地状の通路の奥に小動物の穴倉を思わせるような曲面の壁に囲まれた小広場に、全ての住戸の出入り口が面している。
出入り口だけに囲まれたと言ってよいこの空間は、３階建ての壁の高さによって切り取られた空を仰ぎ見る絶妙なプロポーションで親和性に富んでいる。
バイク愛好者を入居者に想定した集合住宅のため、この広場はバイクの回転が容易な広がりをもち、
１階部分はバイク８台が広場を中心に放射状に置ける玄関となっているところなどは、中心に施回盤を持つ、蒸気機関車の車両を思い起こさせる。
広場に対し直交し、住戸を隔てる壁が途中で緩やかにカーブして角度を変えて隣地境界と直交する配列は構造的に剛性を高め、
水平力を伝達する各階スラブとともにミニマルで合理的構造形式を成立させている。
この構造形式により、外壁面がフリーとなるため、広場に面した側の輪切りにしたような特徴的な連窓の開口部と、
隣地条件に対応させた外周壁面の自由な開口部が可能となっている。
バイク愛好家をターゲットにした集合住宅の特殊解であるが、狭い敷地を合理的に使い切り、
共通した趣味を持つ隣人たちと豊かなコミュニケーションも期待できる優れた空間性をもった作品である。（栗生 明）
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