この東京建築賞は35回目を迎えて、きわめてすばらしい建築賞に育った。今回の応募作品は戸建住宅部門27点、共同住宅部門27点、一般部門一類15点、一般部門二類15点、計84点である。この点数は昨年に比べて38点増、倍増に近い点数であり、その質も極めて高かった。ここから各部門3分の1に絞った点数を現地審査の対象とした。複数の委員がグループとして審査を行い、4月27日に最終選考を行った。
各部門それぞれに力作の応募が多く、選考には長時間を要した。戸建住宅部門は結果的に別荘建築が上位を占めたが、住宅の設計には個別条件が大きく影響するので難しいと思う。最優秀賞となった「杜の家」は構造方式とプランニングの両面に工夫が見られた。共同住宅部門に特徴ある作品が多く見られたのが今年の特徴で、個性的な作品や建築的表情の豊かな作品が選ばれた。最優秀賞となった「NEアパートメント」は敷地を生かして、バイクとともにすむ人びとの家を造ったものである。一般部門一類の作品は、それぞれ多様であり比較が難しかったが「川本製作所東京ビル」というオフィス、また都心の小劇場という対照的な作品が上位入賞となった。一般部門二類は大規模建築であり質の高い作品が集まった。最優秀賞となった「東京音楽大学100周年記念本館」は複合した機能を多面的にまとめた作品で、東京都知事賞もあわせて受賞となった。奨励賞となった「カトリック イエズス会新管区長館」はアトリエ系事務所による丁寧な作品で、こうした部門に入賞したことは喜ばしい。
全体に応募作品数、質ともに高水準の作品群を対象としたので、受賞作品数も例年をやや上回るものとなった。東京建築賞の隆盛を喜びたい。
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