東京深川に位置する老舗冷凍機メーカー本社のオフィスビルの建て替えである。敷地は、長方形で南側公道を挟み、北側を大横川に沿う桜並木の遊歩道に面している。建物は、鉄骨造の8階建てで1・2階と8階に地域交流スペース、3〜7階にオフィス機能がある。
計画の優れた点は、敷地目一杯の形態になりがちな事務所ビルを、総合設計制度の採用で、敷地内に通り抜けの出来る公開空地を設けることにより、公道と水辺の並木道を一体化したこと、また容積の割増し分を地域の文化活動交流スペースや災害時の一時避難スペースに充てながら、十分な執務空間の確保に成功していることだ。地元への社会貢献と社内の和を重んじる企業の姿勢に応える形となっている。
北側に配置された執務室は、社内の意思疎通を高める上下階の開放階段、仕切りをなくした構造表し天井、ガラス張りの全面開口で眺望が利き、明るく広々とした快適な執務空間が感じ取れる。これを成立させているのは、免震構造であり、耐震壁を少なく鉄骨で架け渡した大スパンが寄与している。
外観は、全面ガラス開口に水平を強調する庇、アルミルーバーパネルで囲まれシンプルで軽やか、親しみのある端正なファサードが良好な景観を形づくり、川面に映えて印象的である。安全性、快適性や省エネ性への技術的な挑戦によるアイデアが随所にあり、巧みである。
さらに周辺環境に配慮し、公共性にも積極的に取組み質の高い建築として高く評価され、一般部門二類の最優秀賞、および東京都知事賞にふさわしい作品と判断された。(福島 賢哉) |