敷地は湯河原富士「岩戸山」を望む南斜面に開発された温泉別荘地に位置している。
雛壇状に造成された大きな区画を2つに分割した敷地は南北に細長い。美しい流星が落ちたことに因んで名づけられた「流星庵」はこの敷地を、カーポートを兼ねた前庭、中庭で分割しつつ採光と谷への眺望を巧みに取り入れた快適な住居として計画されている。
90mm角の小断面の間伐材だけで組み立てることを意図したこの住宅は、さまざまな木構造の工夫が凝らされている。 「重ね透かし格子梁」と呼ばれる90mmのヒノキ材を3段に組んだ天井は、4.5メートルのスパンで2階床を支えるあらわしの構造材であると同時にそのまま品格のある空間表現となっている。人を招きいれるような玄関前のポーチから玄関に入り、納戸、家事室、浴室、さらには南庭にまで直線的に伸びる空間は90mm角のスギ材による柱と横架材とを互いに組んだ「ルーバー状の門型フレーム」で構成され、トンネル状の奥行き感とリズム感のある陰影を作り出しており美しい。
リビングダイニングの西面は「貫仕様構造用合板張り真壁」として耐震性能を確保しつつ上下に採光のための開口部をとることで、柔らかな自然光にシンプルな構造部材を浮き上がらせる。そしてこれらの単一部材は長尺ビス(パネリード)だけで留められている。地元間伐材を有効活用したシンプルで分かり易い工法が作り出す空間性を高く評価したい。
(栗生 明)
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