埼玉県川口市にある音楽小ホール併設の住宅で、ホールを内包する半ドーム状の特異な形態が特色である。ホールは独立して運営可能なように、直接外部から入れる開口部と内部間仕切りが設定されている。普段はリビング兼ダイニングスペースと一体化しており、コンサート後のパーティ等の多様な利用形態に対応でき、居住空間との関係性も優れている。
ドームは音響的効果を検討して大きな気積を持たせるように計画された。その特色ある屋根形状、及び内部の木造現わし空間を作るに当たっては、複雑な、曲率が変化する工作を工務店との良好な協力関係を築き共同作業的に作り出していることが評価される。外構関係は、初期コストを掛けずに,徐々に整備されて来ており、閉鎖的にならないような緑化や、環境に優しい舗装材料も検討されている。年月を掛けてもいいから良いものを作っていこうとする建築主の姿勢も好感が持てる。
典型的な住宅地に在って、その形態が周辺環境に違和感を生み出すのではと危惧したが、却って近隣の方々から、角地に建つ事もあって「あのドームのある家」とランドマーク的存在になっており、音楽関係のイベント場として、地域のコミュニティ活動空間として今後活用されていくことが充分期待される住宅である。
(北 泰幸) |