ガリバハウスという建物名称と、子供達が自由に振る舞える背の低い白い空間の写真から想像していた印象とは、実際に拝見した空間は大きく異なるものだった。建物名称の由来である小さな空間、広く大きな空間 両方における視点の往き来ができる空間のしつらえからみえてくるものを探求したいという設計主旨と、Q実空間の整合性もさることながら、オーナー住戸とその他の賃貸部分という一般的な仕分けの合築ではない全体構成が見事な計画である。建物は木造(一部S造)でありながら、最大7つの世帯、テナントが利用できる空間に分割され、マーケットにて想定可能な家賃の賃貸住宅規模に設定されつつ、それぞれに大小さまざまなロフト構成が考え尽くされた空間構成となっている。オーナーは現在2住戸分を住戸内で接続する形で住まわれているが、ライフステージの一場面を暮らす場としての住宅空間を、所有と賃貸、空間の分節と連結といった、枠組にとらわれずに都市空間の中での自由度高い選択肢を実現された設計者の提案は、社会的にもインパクトのあると感じた。
惜しむらくは、都市の中でのマーケティング的な観点とミクロな空間体験やしつらえの巧みさのいずれとも異なる中間スケールへの発想、すなわち周辺環境や街路空間にもたらされる空間のゆとりや緑空間といった、この建物がこの地域のこの場所にあることでつくりだされる環境に対する取り組みがあまり感じられなかった点である。
(國分 昭子) |