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【株式会社 共栄鍛工所 新鍛造工場】

株式会社 共栄鍛工所 新鍛造工場
設計者 建築施工者 建築主
(株)北園空間設計 西松建設(株)北陸支店 株式会社 共栄鍛工所
■建築概要
建設地: 新潟県三条市 用  途: 工場
構  造: RC造一部S造 延面積: 1,263m2
■審査評
 鍛造工場とは、1200度に熱せられた鋼材を叩き鍛えて、機械部品に成型してゆくところである。伝統的な鍛冶屋の技術を現代に伝えるものだといってよいだろう。そこには、巨大なハンマーが上下する鍛造機から発せられる、熱・音・振動が充満する。従って多くの鍛造工場は迷惑施設として山間部などに移転していった。しかしながら新潟県三条市に位置するこの工場は、地元に密着するという方針を選択した。

 共栄鍛工所の新鍛造工場は周辺住民への配慮を考え、夜間でも稼働可能な防音・防振工場として計画された。南北面に空洞の柱が林立し、この空洞を通じて換気がなされるが、工場内騒音は周波数特性を考慮して貼られたサイレンサーによって消音される。したがって換気はなされても音は漏らさないという理想が実現された。また、鍛造工場の心臓部であるハンマーは、しっかりした床板の上で鍛造しなければならないが、緩衝材をサンドイッチした二重構造の基礎によって振動を防いでいる。こうした二律背反的条件の克服には、建築設計者と構造技術者、設備技術者の密接な協力関係が存在した。

 工場外壁面に防音性能の高いガラスブロックを用いて作業空間を明るくするなど、心地よい、高性能な工場建築を生み出している。エンジニアリングに対する信頼感と、端正な美意識が感じられる、気持ちのよい工場建築がここに生まれている。一部一類部門の優秀賞作品にふさわしいと評価された所以である。
 (鈴木 博之)