設計者 |
建築施工者 |
建築主 |
(株)竹中工務店東京
一級建築士事務所 |
清水建設(株) |
日産自動車(株) |
■建築概要
建設地: |
神奈川県横浜市 |
用 途: |
事務所・展示場 |
構 造: |
S造(地上)
SRC造
RC造(地下) |
延面積: |
92,102m2 |
■審査評
本作品は、日産自動車本社ビルが、横浜開港150周年の2009年に創業地である横浜に移転した際に建設された。敷地は、横浜駅東口から徒歩数分で、駅周辺地区とみなとみらい地区をつなげる結節点に立地するが、決して整形の使いやすい形状とは言えない。しかも、2階レベルで公共通路を設けることが義務付けられていた。
これらは設計条件として決して容易ではないが、逆にそれらの条件を生かし、外観の全体構成としては、敷地形状に沿って門型の構えを持つ低層部と、中央部に緩い曲面を備えた整形の高層部としつつ、公共通路が1階の広々としたショールームを見下ろしながら通り抜けるという構成が採用されている。低層部内部では、多目的ショールーム、600人収容のホール、ホール壁にLEDを埋め込んだ大演出壁と公共通路が立体的かつ開放的な空間を作り出している。
中高層部では、中央に頂部から太陽光集光装置による下向き採光を伴った光庭、南北交互に2階分の吹き抜けを設けて、両面採光とすることで、室内全体に自然光がいきわたる工夫がなされている。光庭に面するガラス張りの階段、2層分の吹き抜け内の階段は、有効に使用され、室内全体に渡って、人の移動が垣間見ることのできる視覚的コミュニケーションに満ちた空間が生み出されている。外壁には、遮光および雪落下防止に配慮しつつ周到に形状を検討したルーバーが、省エネルギー上、外観デザイン上、効果を奏している。また、内外ともに、Japanese
DNAを意識した、日本的なるものを感じさせつつも、洗練されたデザインが施された。
このプロジェクトの推進に際しては、ゼネコン設計部、大手設計事務所、ゼネコン施工部を組み合わせたチームによるコンペが行われ、その結果、ゼネコン設計部と他社ゼネコン施工部が協働するという、興味深いプロジェクト体制が実現している。
以上、本作品は、高層建築という、とかく孤立しがちなビルディングタイプにおいて、開放的な公共空間の創出、環境に配慮した快適かつ交流性のある執務空間の創出に成功した秀逸な作品であり、これらの点が高く評価されて一般二類部門最優秀賞に選ばれた。
(小林 克弘) |
|