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【欅アパートメント】
欅アパートメント
写真：木田勝久/FOTO TECA
設計者 建築施工者 建築主
(株)吉富興産一級建築士事務所 (株)吉富興産、渡邊建設(株) 佐藤康信・秀信・三枝子
■建築概要
建設地： 東京都世田谷区 用　 途： 共同住宅
構　 造： ＲＣ造 延面積： 1,317m2
■審査評
　世田谷区、田園都市地域の住宅や小店舗が点在する地域であり、周辺には複数の都市公園もある緑豊かな閑静な住宅街に建設された店舗つき共同住宅である。
　しかし、敷地は南北に長い不正形な三角形であり、商業地域と低層住宅地域にまたがる角地である。建築主が永くこの地で営んでいた花屋の店先にあり、建物の名称にもなっている欅の古木を地域の記憶として残すことから計画が始まっている。この不利で困難な敷地条件の中で、実に巧みに24戸の賃貸住宅と2戸の賃貸店舗付住宅、さらに建築主の住宅が複合して組込まれている。フラットタイプ・メゾネットタイプ・店舗付タイプ・屋上テラス付タイプなど、多様なプランの集合であるにかかわらず、どの住宅も採光、通風といった居住性能はもちろん、空間デザインセンスにおいても設計者の卓越した能力を読み取ることができる。
　こうした多様な住居の集合は、建築の外観にも表現されており、均質で無表情で排他的なファサードを持つものが多い共同住宅とは一線を画しており、都市の町並み景観に固有で好ましい表情を与えている。特に一階に計画された工房付店舗（メゾネットで地下に居住空間を持つ）や美容室（オーナーは上階に住居を持つ）は街路に開かれ都市の活性化に寄与している。事実、住民間の交流も盛んであり、時々バーべキューパーティなどが開かれている。都市の中で「集まって住むことの楽しさと利点」を最大限に引き出した秀作である。

（栗生 明）