都心のターミナルより少し離れた低層高密度な住宅地に立つ戸建て住宅。デザイン的、機能的にも優れ、建築主の要望にも充分応えるのみならず、こうした地域における一つの解法となりうることを目指した秀逸な住宅である。周辺の町並みが、今後3階建てが中心となる事を読み、それに合わせ、4階建てでありながら、建物ボリウムを3階建てに見えるように押さえた。更に、その際の近隣各住戸の相互の視線干渉を考慮して、2階は床からの,3階は高窓からの採光としている。採光部分は設計者の言うところの「光のリボン」となり、大きなマスの壁面と共に形成する抽象的な外観形態は、新鮮で緊張感有る印象を与え、今後の町並みが発展、再構成されていく過程に、良いインパクトを与えることが期待される。それらを支えるディテールも非常に工夫されたものとなっており、見付の細いサッシュは光のリボンの連続性を阻害しないで、夜景も美しくしている。工法的にも、狭小敷地に対応し極限を追及したものとなっている。内部空間においては、家具を極力建築化した造作とし、建築主も透明なスツールや、高さの低い家具を選択するなどの、設計者の意図を良く汲み取った使い方でそれに応えている。密度の高い室内空間であるが、階段の上部空間を大きく取り、閉塞感が生じがちな狭小住宅において、伸びやかで開放的な感覚が、日常生活において自然に味わえる住宅である。
(北 泰幸) |