この建物は、流山市内の戸建て住宅が建ち並ぶ住宅地にある自治会の集会所である。敷地は、住宅地が全体に南に緩やかに傾斜した街路の突き当たりの崖地に沿った長細い窪地にある地域公園の一画に位置している。建物の外観は、屋根面がヨットの帆のような印象で木材と鉄骨の構成で明るくすっきりしたデザインにまとめられた作品である。雨水が溜りやすく、崖で日差しが届かない悪い立地条件を逆手に取り、互い違いになった屋根の上部にしか届かない日差しを効率よく室内に採り入れ、光の箱のような空間を造り上げている。これは設計者が、光をテーマに年間の日照を緻密に計算して形にした結果だという。西側をガラス面で大きく開け、ひと部屋の集会室と公園が一体となるように計画され、屋外に張り出したデッキは、イベントの舞台や縁側として地域住民の語らいの場になっている。
自然素材の椹(さわら)を壁に、床に桜のフローリング仕上と屋根の傾斜で形づけられた室内空間には、天井付近からの日差しの移ろいが豊かな光の変化を演出し居心地よい空間に仕上がっている。夜間も防犯のため、あかりが灯され、昼夜問わず様々な表情が表出されている。地域の良好なコミュニティスペースとして、周囲のまち並みや景観にふさわしい作品として評価された。(福島 賢哉) |