多数のタワーマンション建設に伴い人口が急増する臨海部において、小学校と中学校を併設した計画である。校舎に入ると、隣接する高速道路に対する閉鎖的な外観や、アプローチや校庭側からのコンパクトなたたずまいからは想像できない、豊かなスペースひろがっている。3棟の別棟として計画されたことから生じた短辺方向のすきま空間と外部階段、子供たちの活動の幅の拡がりを意図して2階に配置された中庭、各階において長辺断面方向に意図された光と風の往来空間、これらが重ね合わされた結果、さまざまな空間のぬけがいたるところに仕込まれた構成となっている。学校のどこにいても一旦教室スペースから出ればすぐに自分の居場所がわかる高い開放性、各階に用意されたいつでもアクセス可能な外部空間、わずかにふられた軸線がつくりだす不定形な小空間など、非常に多孔質な空間が実現されている。子供たちはたくさんの居場所の存在を感じ、常に想像力を誘発されることであろう、見学したのは開校して2年という時期だったが、すでに設計者の意図を超えたさまざまなアクティビティの展開する様子がみられた。
臨海部の住宅地とは、平坦な埋め立て地に各機能が完全にゾーニングされ、都市の偶発性を期待することが困難ともいえる都市空間である。こうした地域で日常を過ごす子供たちにとって、この建物で過ごす時間を過ごすことはかけがえのない生活体験であると想像される。地域住民に提供されるにふさわしい優れた学校建築としてみとめられ、都知事賞と選定された。
(國分 昭子) |