東京の低層で閑静な住宅地に建つ瀟洒なたたずまいの住まいである。水平に延びたツートン2層の外観は、開口部が少なく閉鎖的で内部を窺い知れず重厚な趣きがある。
いったん屋内に足を踏み入れると地下1階から地上2階までの3層吹き抜けの中庭パティオに天空からのあふれる光が降り注ぎ、ガラスで仕切られた各階の部屋に届けられ、豊かで落ち着いた何とも言えない気持ちの良い異次元の内部空間が創出されている。
地下の書斎や寝室、地上の和室やリビングからは、ゆったりとした光の移ろいや緩やかな風の流れが感じられ、居心地の良い住まいになっている。建物はシンプルな長方形であり、敷地の形状の比例が2:3で偶然にも平面と断面がこの比例に一致、この繰り返しが予想以上の効果を高めたとの設計者の説明は、十分に頷ける。
特に2階床までをコンクリート打ち放しとし、2階を鉄骨にキーストンプレートの外皮で覆い、梁を逆張りにして天井の段差をなくしながら、外壁の一部を機械仕掛けの開閉窓にするなどディテールの工夫が感じられる。また、鉄板の全溶接葺きの屋根は、造船技術のある施工者とのコラボで成し得たものという。
周辺環境にも配慮され創意工夫に満ちた秀逸な作品であり高く評価したい。
(福島 賢哉) |