一般的には迷惑施設ともされる公衆便所であるが、中央区では多くの観光客や車両運転手が利用する都市施設としてその重要性が位置づけられている。およそ300m以内に1箇所という、東京都の基準を上回る密度で設置された区内の公衆便所は、日常の高い利用頻度に対していきとどいた清掃によって維持されており、年間数件のペースで建替更新が続けられている。 3作品は、いずれも高速道路用地など一般的な敷地とはいい難い非常に狭小なスペースにおける計画ながら、設計者はその真摯な取り組みによって、防犯上の安全性、通気性、メンテナンス性などの要求機能に十分な応える空間を実現している。 個別に受注された計画であるが、基礎からの片持ちとして梁をなくし、落書き防止を兼ねたフッ素樹脂塗装を配したコンクリート外壁、壁と縁を切ったアルミハニカムパネル屋根による軽快な意匠がいずれの建屋においても採用されている。 宙に浮いた屋根と壁の間の空間は、日中は採光と通気に大きな役割を果たし、夜間は外部に対して照明の光が拡散する効果をもたらし、道路と一般の建物のはざまにあってこの建物を一種のオブジェのように存在させている。 小さな施設であるが、機能的な都市施設としてだけでなく、景観を重視する地域利用者の声に応える高い意匠性を兼ね備えた計画が地域の建築家の手によって実現されることの意味は大きく、優秀賞にふさわしい作品としてみとめられた。
(國分 昭子) |