屋根構造は鉄骨箱型トラス梁として軽量化が図られている。下部構造の短辺方向は体育館の幅に沿って大きな開口を有した門型ラーメン構造、長辺方向は連続配置された独立耐震壁構造となっている。 これらの構造要素を一体とするために、一般的には屋根板が重要な役割を果たす。しかしここでは、屋根板の代わりに体育館外周部に配置されたRC造のランニングコースがその役割を担っている。このことは屋根板をより自由な形状とすることを可能にしている。 外壁面から大きくはね出したランニングコースの床は、その屋根位置に設けられたキャンティレバー梁からの吊り構造としている。プレキャストコンクリートでカバーされた吊り材と、地上面からは見えない梁で支持された大キャンティレバー構造は、体育館のデザインを特徴づけると共に、スポーツ施設にふさわしい緊張感を感じさせる。また打ち放しコンクリートの構造躯体をそのまま意匠上のデザインとした建築形態は、彩が不足して少々さびしさを感じるものの、質実剛健を謳う校風が良く表現されている。 この体育館を最も特徴づけているのは、屋根の箱型トラス梁や外壁面に配列された構造体の隙間から導かれる陽光と風が、屋内に調和のとれた明るさと快適さを生み出していることにある。まさに「屋外でスポーツをしている感覚が持てる体育館」というデザインコンセプトが見事に実現されている建築といえる。
(金田 勝徳) |