妙高山麓の豊かな自然環境を背景に、小学校を「一つの大きな家」と捉えたコンセプトの基に設計された教育施設である。都会とは違ったこの地ならではの、上質な教育環境を創りだしている。 建物中央の「学習メディアセンター」を核として諸施設を配置し、全体を大屋根で包み込み、開放的で視認性が高い一体感ある空間は、子供たちにとって記憶に残る原風景となると思われる。各教室とはワークスペース、ギャラリーの中間領域を介して繋がり、大階段を利用した読み聞かせコーナー、アクティビティーを誘発する家具、隠れ家等を設け、セミオープンスクールの特徴を生かした平断面構成としている。 大屋根の梁は地場産杉の間伐材で、一部は子供たちが間伐に立ち会い、伐採跡の植林も行ったとのことで、森林涵養の働きを実感する生きた学習体験を提供している。こういう体験を通して建築ひいては地域が作られる過程を学び、将来、地域社会・建築に関心を持つ子供たちが育つ事を期待したい。 トップライトの自然換気窓システムや、バルコニー手摺の太陽光発電パネルの使用等による環境への配慮も行い、住民が利用する多機能ホール等も設け、地域と共にある学校の在り方も示している。 大空間を法制約の為に、多くのシャッターや垂れ壁で区画せざるを得なかったことは残念であり、今後防災技術の向上や法整備により、こうした規制がクリアされ、そのコストが、より豊かな自然素材を用いた空間づくりに振り向けられるようになることを切に願う。
(北 泰幸) |