世田谷の閑静な住宅地に計画された二世帯住宅である。土地探しから参画したというプロジェクトのコンセプトは『両親』、『書籍』、『みどり』の三つだそうだ。一つ目は親夫婦が気持ちよく暮らせること。二つ目は4000冊の蔵書が見えるようにしまうこと。三つ目はみどりを楽しむ場所があることである。
敷地は北側と西側が道路で高度斜線に有利な30坪の整形地である。地方に住む親を呼び寄せて一緒に住む典型的な二世帯住宅であり、1階が親世帯で2階が子世帯というこれもごく一般的な住まい方であるが、2階にある書庫を独立させてどちらにも属さない空間としているところにポイントがある。書庫は外部から直接アクセスできる芝生の中庭を通して子世代のリビングルームに接続し、両親や近所の子供たちと自然に触れ合えるようになっている。
そして、内外装の各所に見られる細部のディテールも確りしており、特に、在来軸組工法による3階建て住宅を立体解析モデルにより生み出した大胆な空間構成や中庭に面した大きな開口部を既成のスチール鋼材を組み合わせて3.0m×2.5mという嵌め殺しのサッシュとして安価に仕上げたディテールの組み立てなどは高く評価できる。
(西倉 努) |