和光学園発祥の地、世田谷区経堂の小学校・幼稚園の再整備計画であり、1990年に完成した北校舎を保存・改修して残し、他の入り組んだ校舎群を、一体感のある教育空間に再生する計画である。校舎を使用しながらの整備であり、3期に分けての整備計画が周到に練られた。 住宅地の中、決して十分な大きさではない敷地において、グラウンドを囲むように開放廊下を巡らすことで、内外が一体となった中庭型の配置を基本として、小学校と幼稚園の複合施設に相応しい人間的なスケールと統一感を生みだしている。また、体育館屋上にプールを設置することで、幼稚園東側に「和光の杜」と称する外部空間を設けるなど、使用しながら整備の制約の中で、様々な建築的工夫がなされている。住宅地内の道路「農大通り」に面しては、敷地南西角に円筒形のボリュームを配置することで、適切なスケールの変化と学校としての象徴性を生みだしている。 構造はRC造であるが、内部仕上げには、木の無塗装の板材や丸太を使用し、開放廊下も南洋材のルーバーによって、和光小学校の体験教育と自然共生教育という教育理念に答えている。開放廊下は深い庇出日射遮断を行いつつ、引き戸によって季節に応じて、開閉可能となっており、地下ピットで地中熱利用した暖気を床暖房および室内への適切な導入によって、使用電力を大きく削減することに成功している。 以上、この作品は、使用しながらの整備という困難な問題を克服し、教育空間としての在り方および環境配慮の両面において極めて質の高い建築として作り上げている。これらの点が高く評価され、一般一類の優秀賞にふさわしい作品と判断された。
(小林 克弘) |